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ギターをピックで演奏するときのストローク(手の振り)の究極のコツ、つまり極意

ギターで楽にストロークするには、よく水泳の前に準備体操で手首足首をブラブラーっと振るアレのような、もしくは犬が水に濡れたりしたときに全身をブルブルっとゆするような、そういった感じで慣性を利用する、これが一番楽で、しかも速いです。

フラメンコギターなんかはこの一番速い動作でほんとにギターをかき鳴らしているわけですが、ピックを使ったストロークでも慣性を利用すれば、余計な力を使うことなくいい感じのグルーヴが出せます。

たとえば T.Rex の『20th Century Boy』は、冒頭の「ジャカジャーン」が印象的ですが、これなんかはただ手を速く動かそうとするだけだとかなり弾きづらいです。でも慣性を利用したコツをつかむと簡単にイメージしたとおり「ジャカジャーン」となります。

早速具体的なやり方を見ていきましょう。

ギターをピックで演奏するときのストロークのやり方

まずダウンピッキングするときに、初速を気持ち速めにしてピッキングが完了する前に動作を急にストップします。

しかし動作を急停止しても慣性でピックの位置はもう少し下がります。

このもう少し下がっているとき、ピックの移動の速さは動作をとめる前よりもむしろ速くなります。

そして最後にピックの位置が停止したときダウンピッキングが終わりになるわけですが、この位置はそのまま次のアップピッキングの始まりになります。

アップピッキングでももちろん動作を急停止してピッキングの速度をあげ、完全停止がそのまま次のダウンピッキングの始まりになります。

ところで、動作停止がそのまま次のピッキングの始まりになっている、といってますが、実際に演奏しているときの自分の感覚としては、ひとつひとつの動作の完了を確認する前にすでに次の動作に移っていて、振り回されているピックが一番あとからついてきている感じです。

これは人が歩行するときに一歩一歩いちいち重心を完全に移してから足を出しているわけではないのと同じで、サイクル全体が一体となった一連の一動作になっているという感じです。

以上がうまいやり方なのですが、動作を急停止するとピッキング速度があがる、何をいってるんだと思うかたが少なくないと思います。僕も書いててこれでは伝わらないだろうと思いました。

しかし最大のコツがちょうどこのわかりづらいところなので、以下にもうちょっと詳しく書いていきます。

コツは日常動作の感覚をうまく活用すること

ピッキングストロークに近い日常の動作としてよく例えられるのが、手を振って水滴を払う動きです。

腕ごと手を振り下ろし始めるけど、その腕を途中で急に止める。

すると、主に肘を中心にした円運動だったのが、手首を中心にした半径の短い円運動にきり変わり、指先の速度が一旦あがってから急停止することで、水滴が手を離れて飛び去っていくというわけです。

ちなみにこれは和太鼓の叩きかた、バチの使い方も同じです。

ピッキング時の手の使い方のコツと共通する和太鼓のバチさばき

和太鼓は皮のハリが強く、ただ筋肉に頼ってちからまかせに叩いても太鼓を鳴らしきることはできません。

ではどうやって鳴らすのかというと、からだの使いかたを工夫して物理法則を最大限に利用します。

まずバチを持った手を真上いっぱいにもちあげておいてから、一気に真下へ引き落とし、丹田のあたりでバチを持っている手の小指側を引き絞りながら腕の下降運動を急停止させ、バチ先端を最高速度に持っていきます。

指導者のかたは「おろしたバチを丹田で受け止める」といっていました。

バチ先端は最高速度で和太鼓の皮にあたり、皮は大きく沈み込むのですが、バチに余計なちからはのっていないので沈んだ皮の戻りに一切逆らわずむしろ皮と一体になって自然に跳ね返り、その振動を妨げません。

ちなみに皮の振動を妨げずに叩いている様子をはたから見ていると、太鼓の皮の手前1~2cmくらいのところに目に見えない皮があって、バチはその見えない皮にぶつかって止まっているように錯覚してしまうほど、皮の戻りと一体化しています。

だから力まかせに叩く大人よりも、非力な小学生のほうが太鼓全体を完全に鳴らして、遠くまでよく響く大きな音を出したりします。

実際に和太鼓の指導者のかたは「手についた水滴を腕を振ってぴっとはらう感じで」といっていました。

からだを使うとき慣性を利用するのは演奏だけでなくいろいろなことに共通するコツ

慣性を利用したコツは、演奏に限った話ではありません。バトントワリングの世界チャンピオンがバトンをものすごく高く投げ上げるときでも、こないだテレビでやってた片腕でヒットを打ちまくるアメリカの野球少年、キーナン・ブリッグス君のバッティングでも同じでした。

インパクトの寸前に体の回転を止めることで、ボールに当たる瞬間のバットが一番速くなるようにコントロールしているのがよくわかりますね。

古武術の研究を通じて人間の体の使い方を探求し、その知恵を現代のスポーツや介護にいかしている甲野善紀さんも、こういうシンプルな物理の組み合わせによって大きな効果が生まれることを伝えてくれています。

ボブ・マーリーの動画でみるお手本がすごすぎて慣性を利用しているようには見えない、けどおもいきり利用している、というか慣性の利用しかしてない

ボブ・マーリーのピッキングは派手な動作は一切していない、というよりも必要最小限のストロークといったほうが適切かもしれませんが、よく見ると完璧なタイミングで見事に振り抜いていて、おそろしいほどの切れ味です。やっぱり昨日今日はじめた人が出せるレベルの音ではありません。

慣性をうまく利用するやり方のことを「脱力」奏法とか「重力」奏法とかと呼ぶ

よく「力を抜いて」とか、「筋肉ではなく重力を使って」とか、「手の重みを感じて」とか、そういう難しいアドバイスに出くわすことがあります。

そういうのはほとんどが物理法則をうまく利用するための、からだの使い方の工夫だと思って間違いないです。

物理法則は「宇宙の仕組み」といってもいいと思いますが、この記事でとりあげた水のしずくを振り払う動作のほかにも、人間のする動作のすべてに当てはまってしまうので、自転車にのることとか、もっと基本的な動作である歩くこととか、何もかもが宇宙の仕組みにうまくのった動作であるわけです。

宇宙がそうなっているように動作していれば無理がないのでいくらでも演奏を続けられますし、腱鞘炎になったりする心配はありません。

逆に言えば、少しでも苦痛を感じるようなやり方でからだを使ってはいけません。

物理法則を無視して無理に練習を続けても、いずれからだをこわしてしまい続けられなくなりますので、自分を痛めつけるのはすぐにやめましょう。

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Author

naoan

始めるのに遅すぎることはない、とすごい人たちがみんな口をそろえていうので、まにうけて人生たのしもうともいます!