著作権保護期間内の曲の自作楽譜を安全に自サイトで公開する方法
誰でもアクセスできる有名な曲の演奏をとおして、ギター演奏に必須の技術が楽しみながら自然に身につけられる方法をシェアしようと思ったとき、ふと楽譜を自分のサイトに掲載しても問題ないのかが気になったので調べました。
youtubeなどの動画共有サイトなら、著作権を侵害することなく、自分で採譜した楽譜を公開できることがわかりました。
ギター演奏に入門しようというときは、知っている曲をカッコ良く演奏したいと思いますよね。
楽器を習った経験がなかったら楽譜の読みかたもわかりませんが(ぼくが始めたときがそうでした)、そんなとき、TAB譜には大いに助けられました。
なにしろ知っている曲のTAB譜があれば、それを見るだけでなんとなく手を動かせます。
やりたい曲に近い音がいきなりでてきて、自分が生まれ変わったかのような、あるいは自分の能力が拡大したかのような、そういう新鮮な気分になります。
いい作品にであって感動すると、それを親しい人に伝えたくなるのと同じように、いいやり方も人に伝えたくなるのが人間です。
これは人類の進歩の原動力ですし、自然なことです。
そんな気持ちから良かれと思ってとった行動が、ルールを知らなかったばかりに、他人の権利を踏みにじる結果になってしまうことがあります。
いいことをしようとして罰せられるなんてことがあったら、誰もいいことをしたくなくなります。
この記事を読めばそんなもったいない、残念なことになってしまうことを心配しないで、思いっきり自作の楽譜を公開できる、つまり「いいこと」ができるようになります。
この「いいこと」は権利の侵害さえなければ曲を聴いてもらいたい作者にとってもギターを演奏したいひとにとってもどちらにも「いいこと」です。
音楽に関連するコンテンツにふれるかたはぜひご覧ください。
「著作権保護期間」とは
著作権保護期間というのは、著作者の権利が保護される期間のことです。
ものすごくザックリいうと、作者に収入が発生する期間です。
だからこの期間中に誰かが勝手に作品を利用して儲けられないようにする、つまり「保護」するということになります。
実際の期間は、すでにTPP11協定発効(2018年12月30日)後なので、原則として作者の死から70年後までになっています。1
この記事を書いている2019年の70年前は1949年になります。
作者が1949年より前に亡くなっていないものは著作権保護期間内にあるので、クラシックとか民謡とかの伝統音楽以外は保護作品だとみなして行動すれば権利を侵害してしまうことはないでしょう。
耳コピ自作楽譜を自分のサイトに掲載するのは著作権的にNG
音楽の場合、著作権は歌詞とメロディーに発生し、コード進行やタイトルには発生しません。
歌詞はテキストなので文章などと同じく引用可能です。
しかし音楽には引用という概念はなく、一部分を利用する場合(例えばCMのような短時間の動画のBGMなど)でも使用料が発生します。
ただしyoutubeやニコニコ動画などで公開されているコンテンツを自サイトに埋め込むのはOKです。
動画配信サービス運営者がコンテンツを管理していて、埋め込んだサイト側では一切加工できないので、ユーザが直接動画配信サービスを利用しているかたちになり、問題ありません。
このあたりの事情はLife Lyricsさんの記事が激しくわかりやすいので、サイトを安全に運用したい方は一読されることをおすすめします。
画像や動画をWEBサイトに掲載したい、ちょっと待って、著作権侵害になってない?
楽譜の掲載は、権利者が存在する音楽の譜面である場合、権利者の音楽を勝手に使用していることになるので、著作権の侵害にあたります。
かつて音以外で音楽を伝える手段は楽譜でした。しかも現在でも現役の伝達手段です。
だからひとの曲の楽譜を勝手に公開するのは、その曲の音楽データを作成して販売するようなものです。
著作者の権利を保護するためにはこれを許すわけにはいかない、ということです。
youtubeなど一部の動画共有サイトは著作権管理団体と利用許諾契約を結んでいる
youtubeやニコニコ動画などの動画共有サイトは、JASRACなどの著作権管理団体との間で、包括的な利用許諾契約を結んでいます。
こういった契約を結んでいる動画共有サイトで公開されている動画の場合、動画の再生回数に応じて著作権者に利用料がきちんと支払われるので、作詞・作曲の著作権については問題ありません。
カラオケやCM、ドラマ、映画と一緒ですね。
youtubeやニコニコ動画以外にも、いくつもの動画共有サイトが利用許諾契約を結んでいます。2
許諾契約を結んでいる動画共有サイトであれば著作権を侵害することなく安心して楽譜の共有ができます。
Candy and Trappy さんが実際にJASRACの担当者に確認した内容を詳しく書いてくれていて参考になります。
著作隣接権は利用許諾契約を結んでいるわけではないので注意が必要
自作楽譜でも利用許諾契約を結んでいる動画配信サービスにアップすれば著作権を侵害しないで公開できることがわかったので、楽譜を作ったら早速公開できます。
といってもそこはやはり音楽なので、楽譜のページが1ページずつ一定時間で順番に表示されるだけの動画ではつまらなすぎます。
楽譜に書かれている曲を実際に耳にしながら確認できるようにしたいところです。
もっと言えば、楽譜を読める人が読んでいるときの感じを疑似体験できるようにしたいです。
そのためには、単純に考えれば、その曲をBGMにして動画を編集すればいいと思いますよね?
ところが作成された音源の複製権(原盤権ともいわれる)は著作隣接権といって利用許諾契約とはまた別な話で、演奏やプログラムが記録されたデータの所有権とそれを複製する権利は、たいてい音楽出版社がもっていて、たとえ著作権者であろうとも勝手に公開したりすると権利の侵害になってしまいます。
簡単にいうと、自分の買った音源や映像であってもyoutubeにアップするのは違法になります。
ということでyoutubeで公開できるのは自作のものか著作権フリーのものだけということになります。
自作楽譜を動画共有サイトにアップして、それを自分のサイトに埋め込むかたちならOK
だれかが作った曲をだれの権利も侵害することなく自分のサイトで公開しようとするときに安全な方法をまとめるとこうなります。
- 作詞・作曲者の権利は利用許諾契約を結んでいる動画共有サイトでの公開なら侵害しない
- すでにある製作物(音源や楽譜)を使用している動画は製作者の権利を侵害しているので、自作する
- アップしたコンテンツを動画共有サービスから配信されるように自分のサイトに埋め込む
権利侵害を気にせず動画共有サイトで公開するなら、自作データで作る動画が一番安心です。
TAB譜と音源を作って動画に編集したものをyoutubeにアップし、それを自分のサイトに埋め込めば、法律上問題ありません。
たしかに法律上問題はありませんが、それでは本物の劣化コピーにしかならないのでは? という懸念はあります。
しかしそこは元ネタをお手本として埋め込みリンクすれば大丈夫です。
音楽には引用がない、と上のほうで書きましたが、この動画埋め込みリンクなら引用の代わりに使えます。
そして本家本元の動画を並べて提供することで、内容を説明してはいるもののクオリティーに劣る自作コンテンツが、圧倒的にリッチな本家のコンテンツをひきたてて、本物のすごさがより際立ちます。
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たとえばJASRACが利用許諾契約を結んでいるサービスは「利用許諾契約を締結しているUGCサービスリストの公表について」というページにリストされています。 ↩︎